はじめに
脳性まひは、生まれてから大人になるまで生涯にかけて身体的なケアが必要な疾患です。
一般的には身体の各部位に筋肉の麻痺が見られることが特徴です。
ただ、麻痺のタイプや身体のどこに麻痺があるのかによって発達の経過は違うものになります。
特に生まれたばかりの頃から始まる早期の発達フォローは、脳性まひの赤ちゃんにとってとても重要です。
今回は、脳性まひの乳幼児期における発達フォローについて紹介していきたいと思います。
そもそもどのように赤ちゃんは発達していくのか?
脳性まひの子どもは、身体運動麻痺の影響により運動発達が遅れてしまいやすくなります。
ただ、健常児の子どもであっても生まれてすぐに立って歩けるようになるわけではありません。
人間の赤ちゃんは、約1年もかかってやっと歩けるようになります。
これは他の動物からするとかなり長い期間です。
ただ、この1年間という長い期間をかけて歩けるようになることが大切で、実はこの期間にいろいろな発達をしていきます。
以下に一般的な運動発達についてまとめていきます。
これが簡単な身体運動発達についてですが、赤ちゃんはこの発達の間ごとにいろいろな運動経験をしています。
例えば、生後1~2ヶ月頃はまだ仰向けで手足をバタバタと動かすことしか出来ません。
しかし、このバタバタとした運動を行うからこそ寝返りや腹ばいになることが可能になります。
このバタバタとした運動は、一見すると何も目的がないような運動に見えます。
実はこのようなバタバタとした運動を行うことで、重力の下でどのように動けばよいのか学習しているのです。
このようにして次第に様々な運動ができるようになるのです。
この多様な運動パターンは生まれてから生後6ヶ月まで続きます。
生後6ヶ月を過ぎると、今度は多様な運動パターンは少なくなります。
多様な運動パターンが少なくなる代わりに、生後6ヶ月までに経験した運動パターンを元にその運動の質を高めていきながら発達していきます。
つまり身体運動のパターンは増加しないけれども、より身体運動が強化されるということですね。
生後6ヶ月以降にずり這いや立ち上がりなどの身体運動発達が見られるのは、それまでに様々な運動を経験しているからなのです。
脳性まひの赤ちゃんはどのように発達するのか?
脳性まひは、周産期に何かしらのアクシデントが起こることで脳にダメージが与えられた状態になります。
そのため、身体麻痺や言語面、情緒・社会面の障がいなど様々な症状が見られるようになります。
この状態は生まれてすぐの段階から見られ始めるので、発達のフォローもできるだけ早く行われます。
ただ、脳性まひの赤ちゃんは生まれてすぐの頃はあまり麻痺症状が目立ちません。
見かけ上は健常児と変わらないのですが、運動のパターンとしては限られた運動になってしまいます。
生まれてすぐの時期は、限られた運動パターンであっても見た目上は健常児とあまり変わりません。
しかし、後々の運動発達が遅れてしまうということですね。
そのため、発達のフォローを目的に理学療法士を始めとしたリハ専門職が早期から治療を行います。
特に生後3ヶ月頃までの運動は、その後の運動発達に大きく影響するので多様な運動を経験することが大切です。
脳性まひの赤ちゃんは、自分で色々な運動を行うことが難しいので理学療法士による発達フォローはとても重要というわけですね。
どのように脳性まひの赤ちゃんの発達フォローを行うのか?
前述したように乳幼児期は身体運動面での発達が重要なので、主に理学療法士が関わることが多いです。
脳性まひの乳幼児期の運動発達は、正常発達の月齢ごとに細かく設定して関わっていく必要があります。
出生直後から3ヶ月ごろまでは、体幹中枢部(主には腹筋群)の活動性を促していきます。
この時期は頭部のコントロールを促す(首がすわる)ことが重要だからです。
脳性まひの赤ちゃんは運動のパターンが突っ張るような運動が主な症状になります。
そのため、仰向け(背臥位)の姿勢で頭を挙げたり、両手でおもちゃ遊びをしたりなどの運動が難しくなってしまいます。
こういったことから首がすわりはじめる3ヶ月頃までは、体幹の活動性を促すことで頭や首の活動を促していきます。
次に生後6ヶ月までは赤ちゃんは脳の神経回路の形成が爆発的に起こります。
これは脳性まひの赤ちゃんであっても同じなので、様々な運動の経験はその後の身体運動発達につながっていきます。
生後6ヶ月を過ぎると、それまでに培ってきた身体運動のベースを元に発達していきます。
健常児の場合は、頭を空間で支えながらその場で座ったり四つ這い移動を行ったりすることができるようになります。
それに対して脳性まひの赤ちゃんは、うまく空間で頭を支えることが難しくなってしまいがちです。
つまり、6ヶ月以前の様々な身体活動が行えていないと、6ヶ月以降の発達は難しくなってしまうということです。
生後6ヶ月までは様々な身体活動を経験させ、生後6ヶ月以降はその身体活動を元に抗重力活動を促し頭部を空間で保持する練習を行うこと、これが脳性まひの乳幼児期における発達フォローの考え方です。
まとめ
脳性まひの産まれてすぐの時期から始まる発達フォローは、その後の運動発達に大きく影響します。
この時期の発達フォローは、子どものときだけでなく大人になってからも良い影響を及ぼします。
特に生後6ヶ月までに様々な身体運動を経験することは、自分で思ったように動くことが難しい脳性まひの赤ちゃんにとってとても大切です。
脳性まひの赤ちゃんはそれぞれ個人差がありますが、生まれたときは健常児とそれほど変わりません。
色々な運動を経験することは、脳性まひの赤ちゃんの変形や側弯を軽減し予後の改善につながっていく可能性が高いのです。
脳性まひの早期からの発達フォローを知ることで、脳性まひの子どもたちへの理解を深めていきましょう。