はじめに
筋ジストロフィーは、生まれた直後から発症する筋肉の遺伝性疾患です。
筋ジストロフィーの中にはいくつかの型があり、その中でも最も多いのが『デュシェンヌ型筋ジストロフィー』と呼ばれる型の筋ジスです。
筋ジスは現状完治することが難しい難病ですが、その症状についてはあまり詳しく知られていません。
今回は、そんなデュシェンヌ型筋ジストロフィーの病態について分かりやすく説明していきたいと思います。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーはすぐに歩けなくなるわけではない
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(以下筋ジス)の主な症状は全身の筋力低下です。
ただ、出生後すぐに筋力が低下し始めるわけではありません。
そのため、筋ジスの子どもたちはほとんどが歩けるようになります。
産まれたばかりの赤ちゃんの頃からしばらくは特に運動発達の遅れは何もなく正常に運動発達が進みます。
ただ、どの筋ジスのお子さんも歩けないということは基本的にはありませんが、歩き始めが1歳6ヶ月から2歳前後とやや遅いことが多いのが特徴です。
その後しばらくは走ったり、ジャンプしたりといったこともできるようになるのでこの時期は病気が発見されることは少ない傾向があります。
そして、5歳ぐらいになると運動能力の発達がピークを迎え、徐々に筋力の低下が進行していきます。
この時期ぐらいになると両親も他のお子さんと比べて運動が苦手な印象を受けることが多くなります。
年長ぐらい(5歳から6歳ごろ)になると転倒することが増加したり、運動会などでの走り方がおかしかったりすることで病院を受診して筋ジスが発見されることが多いです。
5~6歳ごろをピークに筋力低下が少しずつ進行していきますが、すぐに歩けなくなるというわけではありません。
歩けなくなるのは小学生の間がほとんどで、8歳ごろから立っていることすら難しくなるほど筋力の低下がみられるようになり、だいたい9歳から10歳ごろに歩行が難しくなります。
歩行が出来なくなる年齢は、筋力低下の進行具合や身長・体重等の影響やその子の日常生活の影響などを受けます。
しかし、おおよそ12歳までには全てのデュシェンヌ型筋ジストロフィーのお子さんが歩けなくなると言われています。
歩けなくなった後はどのような経過をたどるのか?
歩くことが難しくなった後は車椅子での生活になっていき、足の次は体幹そして手の筋力低下が出現するようになります。
手の筋力低下とともに手動で車椅子を自走することが難しくなり、手動の車椅子から電動車椅子へと移行します。
体幹の筋力低下により座位を保持することが難しくなると身体を起こす機会が少なくなり、呼吸を行う筋の筋力低下、心臓を動かす筋の筋力低下が見られるようになります。
何も治療を行わなければ自然経過により20歳前後で亡くなることが多いです。
なぜ全身の筋力低下が起こるのか
なぜ筋力の低下が起こるのかというと、人の筋肉の中には『ジストロフィン』という物質があります。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの方はこのジストロフィンが著しく少ないまたは欠損している状態であるために筋力低下が起こります。
ジストロフィンは筋肉の構造を保つ機能があるのですが、筋肉の細胞の破壊と再生をうまくコントロールすることで筋力を維持しています。
しかし、筋ジスの方の筋肉はこのジストロフィンが著しく少なくなっているもしくは欠損しているので、筋細胞の破壊と再生がうまくコントロールできません。
そのため筋肉の細胞破壊と再生が過剰に起きてしまいます。
そのため、どんどん筋の破壊と再生を繰り返してしまい、筋が再度作られる機能が追いつかなくなりその結果筋力低下が生じてしまいます。
また、発症する確率は男性がほとんどの割合を占めており、女性がデュシェンヌ型筋ジストロフィーになることはまずありません。
ただ、女性の場合は筋ジスの遺伝子を遺伝することでその子ども(男の子)が筋ジスになってしまうリスクが高くなります。
まとめ
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療は様々な取り組みがなされていますが、現在のところ完治することは難しい難病です。
薬で唯一効果的と言われているステロイドに関してもその症状を遅らせることで歩行可能期間が延長すると言われていますが、完全に症状の進行を予防することはできません。
その中で筋力低下の進行を緩やかにし、できるだけ日常生活活動能力を維持するリハビリテーションの役割はとても重要な位置を占めています。
リハビリテーションと投薬を組み合わせることで、予後を出来るだけより良くしていくことが重要です。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーとはどういった病気なのかしっかりと理解していきましょう!