いつも記事を読んでいただきありがとうございます。
今回は「点頭てんかん」について解説していきます。
弟が患っていることもあり、家族からの目線と
理学療法士からの目線でお話しさせていただきます。
概要
点頭てんかん(ウェスト症候群)とは
小児てんかん症候群のひとつで、
そのほとんどが1才未満の乳児に発症します。
特徴は異常な脳波と繰り返す発作です。
治療には副腎皮質ホルモン(ACTH)が有効とされています。
多くの場合、身体障害や知的障害が残ります。
診断基準
点頭てんかん(ウェスト症候群)と
診断するためには以下の点をみます。
- 好発する生後3~11か月である。
- 発作が5~40秒おきに繰り返される。
- 脳波の異常(ヒプスアリスミア)を認める。
- 発作前後で発達の停止もしくは退行がみられる。
このような症状や所見を参考にされています。
詳しい情報
発症率
出生数1,000人に対して0.16~0.42人と
とてもまれな病気です。
男児のほうが罹患率がやや高いです。
難治性てんかんの中では最も多いとされています。
原因
発症する原因は症候性と非症候性に分けられます。
原因によって経過や治療が異なるため判別する必要があります。
症候性
- 発症前に脳の障害がある
- 基礎疾患:結節性硬化症、Aicard症候群、新生児重度仮死による脳障害、胎児感染症など
非症候性
特発性
- 発症までの発達は正常
- 基礎原因、神経学的徴候がない
- 家族歴が関連する可能性がある
潜因性
- 基礎疾患がない
- 発症前に発達遅延などの所見がみられる
以上のように同じ点頭てんかんであっても
原因は異なることがあります。
症状
主にてんかん発作と発達障害があります。
まず、発作の特徴は
- うなずいたような状態
- お辞儀をするように体を曲げる
- 両腕をバンザイするように振り上げる
このような発作が脳波の異常によって数秒続きます。
それが数秒から10秒間間で数分間繰り返す(シリーズ形成)
ことも特徴のひとつです。
発作が出やすいタイミングは
- 入眠まぎわ
- 覚醒まぎわ
特に生後3~11か月にみられる事が多いです。
次に発達障害についてです。
発作を引き起こす異常な脳波によって発達の退行が起きます。
その結果、発作を発症してから
- 不機嫌になる
- 笑わなくなる
- 首がすわらなくなる
- 座れなくなる
などの症状がみられる事があります。
発達の退行を考慮すると
発症から1ヵ月以内に治療を行う事が勧められています。
したがって治療は発達の退行と発作を
止めることが主な目的として行われます。
そして、早く状態が安定することで
また発達を促すことが出来るのです。
この発達の状態というのは
人により様々な特徴があります。
周りの子と比べると違うことが多く、
不安に思うこともあると思います。
しかし、発達の状態や合併症などの
影響で違いが出ているため
前と比べてどうだったかを
みつめることが大事になるでしょう。
治療法は2種類
主に抗てんかん薬治療、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)治療を行います。
ACTHのほうが効果があるとの
研究がありますが、副作用もあります。
- 高血圧
- 電解質異常
- 易感染性
- 肥満
- 副腎皮質機能不全
- 肥大型心筋症
- 消化管潰瘍
などの症状がでることがあります。
しかし、症状をみながらコントロールすることが
できるので他の治療方法よりも安全で推奨されています。
弟もACTH治療を行い症状が落ち着きました。
それからは内服薬でてんかんを予防しています。
現在まで大きな発作を起こすことなく暮らしています。
予後
点頭てんかんを発症後には
身体障害や知的障害をともなうことがあります。
身体障害のみの方はとても少なく、
身体障害と知的障害の両方と付き合う方が多いです。
てんかんの研究において、
発作がなく脳波が正常化している方は
身体能力や知能の予後がよいとの結果がでています。
睡眠
知的障害をもつお子さんが睡眠の
問題を抱える割合は16~45%です。
これは知的障害をなくとも
睡眠に問題を抱える割合と
大きな差がありません。
つまり、知的障害があるからといって
睡眠障害が必ず起きるというわけではありません。
睡眠と問題行動の関係
しかし、睡眠の問題と日中の行動の問題は
とても関りが深いことがわかっています。
睡眠の質は知的障害の有無や小児か成人かに
かかかわらず重要なことです。
障害を持つ方の場合、
睡眠による問題が異なった形で
現れるためよく考える必要があります。
特にメラトニンというホルモンは
が睡眠障害を治療するために有用だと言われています。
メラトニンは睡眠のリズムを
調節する働きを持ちます。
睡眠のリズムが良くなり
質が向上する事で日中の眠気などが
減ることに繋がります。
その結果、日中の機嫌が
良くなり問題行動などとして
現れることが少なくなります。
このような理由から
睡眠リズムを整えることは
生活上、医療上とても重要なことと言えます。
けれども、知的障害を抱える方の多くは
その原因がさまざまであり、
精神疾患も抱えていることがあるため
1人ひとりに合った方法が必要になります。
特に感覚に関しては敏感になりやすいので
その子にとって心地よい環境を
整えることは重要です。
医療的ケア
てんかん発作により身体障害が引き起こされると
日常生活を送るためには
いくつか問題が出てくることがあります。
例えば、
- 痰をだすのが難しい
- 飲み込むのが難しい
そのようなときには
- 吸引
- 経管栄養
などの医療的ケアを保護者が行うこともあります。
では、医療的ケアとはどのようなものが
あるのでしょうか?
- 酸素療法
- 気管カニューレ
- 人工呼吸療法
- 経管栄養
- 胃瘻
などがあげられます。
身体障害の程度や合併症の
有無によって必要なケアは様々です。
そして、これら以外にも
医療的ケアはあります。
少しでも安全かつ楽に生活できるよう
活用していきたいですね。
利用できるサービス
障害がある方には利用できるサービス、
障害福祉サービスがあります。
内容は介護や訓練に関するものです。
サービスを利用したときは
利用料の1割を負担します。
訪問看護
先ほどあげたような医療的ケアを
家族だけで行っていくには不安もともないます。
そこで医師の指示のもと
保健師、看護師、理学療法士などが自宅を訪問します。
そして専門的なアドバイスなどを
直接受けることができます。
居宅介護
介護のプロであるヘルパーが
訪問し日常生活を手助けするサービスです。
身体介護といわれる
食事、入浴、排せつ。
生活援助といわれる
掃除、洗濯、食事の準備。
などのサービスを受けることが出来ます。
ショートステイ
施設に短期間入所して
入浴や排泄、食事などの
介護を行うところです。
介護を主に行うご家族が
休息(レスパイト)するための役割があります。
また、ご家族が病気やケガなどで
介護を行うことが出来ない時に
利用する目的もあります。
移動支援
障害のある方を対象として
移動の介護をするサービスです。
外出する際に移動や
行動の手助けをしていただけます。
移送サービス
介護タクシーなどでの
車で移動するためのサービスです。
これら以外にも様々なサービスがあります。
そしてこのようなサービスを利用することで
お子さんの健康や安全を確保する事ができます。
また、ご家族の介護負担が減ることで
身体的、精神的な余裕を持つことができます。
以上が点頭てんかん(ウェスト症候群)の
大まかな内容になります。
どのような病気なのかを知ったり、
再確認するために役立てて頂けると幸いです。