障がいのあるお子さんは、病院で生まれた直後から、医療的なケアをはじめ継続的な支援が必要です。
ですが必要な支援も、利用できるサービスも、支援に関わってくる人も、
それぞれのライフステージによって変化していきます。
出生から成人まで、切れ目のない総合的な支援をしていくためには、
各ライフステージでその時々に合う適切なサポートを行っていく必要があります。
今回は、障がい児の出生から成人するまでを4つのステージに分けて、支援のポイントをまとめています。
ライフステージに合わせた支援の必要性
障害福祉サービスは、年齢によって受けるサービスを規定している法律が違います。
また、医療的ケアや障害福祉サービスが必要なお子さんの支援を考えるとき、成長の段階によって必要な支援や使えるサービスはそれぞれのライフステージによって変化してきます。
切れ目のない支援をしていくためには、家族を中心に支援者チームの“よこ”の繋がりに加え、ライフステージの移行期における“たて”の支援も大切になります。
ここではライフステージの分類を、
・NICUや小児病棟から在宅生活へ向けての「在宅移行期」
・在宅生活が落ち着いてきて療育機関などの利用が開始する「幼児期」
・学校で過ごす時間が増えてくる「学齢期」
・卒業後の加齢に伴う二次障害への中長期的なフォローが必要な「成人期」
の4つの段階に分けています。
在宅移行期(出生~2歳)
具体的な生活イメージができなかったり、お子さんの障がいを受け入れられなかったりと、
今後の育児や自宅での生活に関する不安要素がたくさんある時期です。
まずは、入院中から、本人や保護者と支援者となる関係機関(例えば医師、看護師、リハビリ専門職、相談支援院など)との連携を図り、
チームとして支援する体制を作っていくことが大切です。
そのためにはまず直接的なコミュニケーションを通して信頼関係を構築することが重要となってきます。
お子さんが生まれてすぐに「重い障がいがある」と告げられた家族は、
お子さんの障がい受容が十分にできていなかったり、
お子さんに対して罪悪感を抱えている場合も少なくありません。
少しずつ本当の思いを話してくれるようになるまで、しっかりと信頼関係を構築しましょう。
チームとしての支援体制が整ってからは、
保護者や各専門職が同じ目標へ向かって支援ができるような連携と役割分担が大切です。
幼児期(3~6歳)
在宅への移行後は、本人や家族の在宅生活の状況確認や心身状態の変化、家族状況の変化などをヒアリングやモニタリングを通して情報共有をしていきます。
障がい児の在宅生活では、初めての育児に対する不安が大きかったり、頑張ろうとしすぎて無理したり、十分な睡眠がとれていなかったり、お母さんの負担は大きくなっていきます。
また、お子さんの成長とともに今までできていた方法が通用しなくなり、疲労が蓄積して心身ともに疲弊し不調が生じることは少なくありません。
早いうちから訪問看護や短期入所などの福祉サービスを活用し、本人のケアと同様に保護者もケアすることが大切になります。
また、次子の出産やお母さんの就労・社会参加について考えるのもこの時期です。
持続できる在宅生活を組み立てていく上で、相談支援などのサービスもうまく活用しましょう。
学齢期(7~18歳)
在宅生活がメインだった時期を終え、就学し学校での時間が大部分を占めるようになると、これまで以上に多くの人が支援者として関わることになってきます。
学校機関や放課後等デイサービスなど、環境の変化に対応できるよう、これまで以上に他職種との連携が大切となります。
兄弟がいる家庭においては、保護者が障がい児の介護に追われ、兄弟児と関わる時間が少なくなったり、育児の仕方が変わってきてしまうケースもあります。
親の気持ちを引きつけたくて、他害などの問題行動に移したり、自分の不満を表に出さずに我慢したりと、兄弟児は気持ちの負担を感じていることが少なくありません。
障がい児の兄弟には
- 集中力がない
- 反抗的である
- 興奮しやすい
- かんしゃくを起こしやすい
- 多動・多弁である
などの特徴があると言われており、
気持ちの負担を表出する子もいればしない子もいます。
積極的に兄弟児と関わる時間を作り、障がいのある子もない子も同じように目を向けられると良いでしょう。
さらに学齢期から成人期への移行の際には、保護者の方の主な相談先が、学校の先生から相談支援員へと変わる場合もあります。
スムーズな移行ができるように、卒業前から連携を図ると良いでしょう。
成人期(19歳~)
これまでは重症心身障がい児は成年までは生きられないと言われていましたが、医療や介護の発展により、生命を全うできるようになってきています。
成人期には加齢に伴って、これまでの障害に加え、心身機能の低下や筋骨格系・循環器系をはじめとする二次障害が増えてきます。
また、障がい児が年をとると同時に、家族も高齢化していきます。
介護者の高齢化により、介護力の低下によって利用するサービス内容や利用頻度の変更が必要となってきます。
家族を含めて、無理のない在宅生活を維持・継続していくために、生活介護事業所との連携や、障がい福祉サービスの利用を増やしたり、成年後見制度などの対応なども求められます。
まとめ
今回は、出生から成人までの各ライフステージに合わせた支援についてご紹介しました。
在宅移行期には、家族の障害受容や、支援者として関わる人たちとの信頼関係の構築、チーム体制の構築が大切です。
在宅生活が始まると、ご家族の不安や負担、疲労が蓄積していきます。またお母さんの就労や社会参加についても考えていく時期なので、福祉サービスや相談支援などをうまく利用していきましょう。
就学後は、学校生活の時間が長くなるのでそれまで以上に多くの人が支援に関わることとなります。
支援者との密な連携を図り、中長期的なマネジメントをすることで、スムーズに成人期の地域生活へ移行することができます。
成人期には、本人も家族も高齢化していくため、生活介護事業所との連携や、サービス利用を増やすなどして介護力の低下に対応することが大切になります。
どのライフステージにおいても、大切なのは支援者のチームの連携です。
「その子らしさ」や「本人や家族の気持ち」を大切にしながら、チームで同じ目標に向かって役割を果たしていくことが、良い支援と言えるでしょう。
それぞれのライフステージで、医療や教育、地域、福祉の各関係機関と適切な連携を図り、切れ目のない支援を目指しましょう。