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今回は気管カニューレからの吸引についてご紹介していきます。
気管カニューレから吸引をするときには口や鼻から吸引するときより、注意する事があります。また、カニューレの中だけの吸引とカニューレより先の吸引では注意点が大きく変わります。
気管の粘膜は弱くてすぐに出血しやすく、菌が入ると炎症などが起きやすい状態です。注意するのは「より清潔、深さは浅く、適切な圧」で吸引することです。
もっと具体的に知りたい方はいませんか。
吸引チューブを入れる長さ(深さ)は?
吸引するときの圧は?
手順は?
このような疑問をお持ちの方は最後まで読んで頂けると参考になります。
目次
- 1.口や鼻からの吸引よりも清潔にする
- 2.痰を出しやすい状態にする
- 3.唾液や鼻の分泌物にも注意
- 4.気管カニューレの中と先を吸引するときの違い
- 5.注意点
- まとめ
吸引をすると呼吸がラクに出来るようになります。口や鼻から肺までの空気の通り道(気管)にある痰などを吸い取ることで息苦しさが取れます。
痰などを取り除くことで肺炎や窒息、無気肺を予防する事ができます。
しかし、気管カニューレから吸引をするときには方法や注意する事があります。
1.口や鼻からの吸引よりも清潔にする
気管に入れる吸引チューブはより清潔にするようにしましょう。
口や鼻からの呼吸だと気管に届くまでに空気が温められ、ほこりや菌などが取り除かれます。そのため、気管のなかは基本的に無菌状態になっています。気管切開をしていると菌などが取り除かれずに無菌状態の気管に肺に入ってしまいます。すると肺炎や無気肺を引き起こす恐れがあります。
そうならないために、以下の点に注意していきましょう。
- 吸引チューブをアルコール綿でしっかり除菌する
- 使い捨ての医療用手袋を使用する
- 口や鼻の吸引をして消毒していないチューブで気管吸引をしない
2.痰を出しやすい状態にする
吸引をする前には痰を出しやすい状態にしましょう。
その方法はこちらです。
- 痰を出しやすい姿勢をとる
- 痰が柔らかく切れやすい状態にする
- 水分をとる
- 部屋を加湿する
- 吸入器をしようする
- クスリを飲む
- 身体を動かす
- 呼吸を介助する
これらの方法で痰を気管に集めて、吸引しやすいようにしましょう。
3.唾液や鼻の分泌物にも注意
気管に溜まってしまうのは痰だけではありません。
上の○の部分から唾液や鼻水、食べ物などが気管に溜まり、呼吸の邪魔することがあります。
正常であればそれらは無意識のうちに飲み込みますが、重症心身障がい児は以下の理由で気管に溜まってしまいます。
- 飲み込むのが苦手で誤って気管に入る(嚥下障害)
- 気管に空気以外のものが入りそうになると出る(反射咳反射が弱い)
- 鼻水などが多く出てしまう
4.気管カニューレの中と先を吸引するときの違い
同じ気管カニューレからの吸引でも、カニューレの中とカニューレの先では方法が大きく変わります。
吸引圧はカニューレの中であれば原則20kpaですが、40kpaまで上げることができます。吸引圧を少し強く出来るのは口や鼻、気管と違ってカニューレには粘膜がなく、傷つける心配がないからです。その反面、粘膜がないということは潤いが少ないので、痰が硬くなりやすく吸引圧弱いと吸いきれないことがあります。
カニューレの先の吸引では口や鼻から吸引するときと同様、20kpaが推奨されています。粘膜を傷つけないためにはこの程度の強さが良いでしょう。
吸引圧のかけ方はカニューレの中は、はじめから吸引しながら入れていきます。カニューレの先では吸引圧をかけないで入れて、決められた深さに届いたら吸引圧をかけながらゆっくり回しつつ引きます。これも粘膜を傷つけないようにするためです。
吸引チューブの先端にも配慮して気管の粘膜を傷つけないようにしましょう。特に先端がやわらかく、丸いタイプが安全です。
5.注意点
気管カニューレは呼吸がラクになり、吸引がスムーズにできるために効果がある医療的ケアです。しかし、気管カニューレは人工物なので身体に合わない状態だと問題がおきます。
その問題がこちらです。
- 出血する
- 肉芽ができる
- 感染する
(参考:http://mamafami.sakura.ne.jp/kaigo/tan-keikan/s2-045.html)
特にカニューレと切開孔が当たる場所、カフと気管が当たる場所。ここは強く当たったり、擦れる場所なので上記の問題が起きやすいです。問題があるときはカニューレのサイズの検討や固定方法の見直しが必要になります。
出血の原因はサイズが合っていない、固定不足、乾燥があげられます。また、カニューレの先端が気管に穴を開けてしまい、気管のとなりにある動脈を傷つけると大量の出血をしてしまう危険もあります。そうならないためにもカニューレを正しく使っていきたいですね。
肉芽は聞きなじみのないかたもいるのではないでしょうか?
これは身体の組織が傷ついた場所が治るときにできる肉の盛り上がりです。原因は繰り返し出血したり、擦れることです。そして、肉芽の中には毛細血管が多いので盛り上がって当たりやすいうえ、出血しやすいです。
肉芽ができたらステロイド剤で小さくしたり、レーザーなどで焼きます。そして、再発を防ぐためにカニューレのサイズや固定方法を見直します。
気管の中は無菌状態であることに加えて切開した部分に穴があるので感染の危険が伴います。特にカゼ、インフルエンザ、肺炎などにかかりやすい状態です。また、感染は出血や肉芽を悪くするので注意が必要になります。
まとめ
気管カニューレをしているとき、口や鼻から吸引するとき注意点が変わりましたね。
その注意点も気管カニューレの中だけ、気管カニューレの先で違いました。
口や鼻からの吸引との違い
- より清潔にする
- 吸引チューブを挿入する長さが短い
気管カニューレの中だけ
- 吸引圧は20kpa
- 痰が硬い場合は40kpa
- はじめから圧をかけて吸引チューブを入れる
気管カニューレの先
- 吸引圧は20kpa以下
- 吸引チューブの先端が柔らかく、安全な形
- 深さは主治医と決めたところまで
- 吸引圧をかけるのは吸引チューブが決められた深さに来てから
このようなことに注意する事で気管カニューレからの吸引は安全にできます。適切にできることで呼吸がラクになったり、無気肺や肺炎の予防ができます。
重要な事でも、口や鼻からの吸引と気管カニューレをしているときの吸引で変わらないことはこちらです。
- 痰を柔らかくする
- ネブライザー
- 水分補給
- 加湿
- 自分で出しやすい(気管に集めやすい)姿勢をとる
- 呼吸介助をする
以上の方法も活用して吸引される側もする側のも負担が軽くなるようにしていきたいですね。吸引では気管の中にある痰や唾液などを直接、吸い取ることができます。しかし、それらは吸引チューブが届かないところにも溜まっています。吸引の回数や時間を減らすためにも吸引だけに頼らず、それ以外の方法もやっていきましょう。
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参考:北住映二・杉本建郎,2018,新版 医療的ケア研修テキスト,株式会社クリエイツかもがわ